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2024/8/27
ベネチア、入場料導入の効果乏しく 2025年も引き上げへ

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR13AB70T10C24A8000000

より

「水の都」として知られる世界遺産ベネチアで7月、日帰り客から5ユーロ(約800円)を徴収する入場料制度の試験運用が終わった。夏のハイシーズンの「オーバーツーリズム」(観光公害)の抑制が目的だったが、期待した観光客減少の効果は乏しかった。市は来年も入場料を引き上げて再導入する方針だ。

混雑が見込まれた連休など7月までの計29日間に断続的に試験導入された。対象は午前8時半から午後4時までに訪れる日帰り観光客で市内の宿泊客や14歳未満は徴収を免除された。

対象者はチケットをオンラインか現地でQRコードを購入する。市の監視員が市内の数カ所で支払いの有無をチェックし、違反者には50〜300ユーロの罰金を科す仕組みだ。

都市レベルの入場料の徴収制度は世界初とされる。市当局者によると、約4万9千(旧市街)の人口のベネチアに昨年約2千万人の観光客が訪問し、住民の生活や都市周辺の生態系を脅かす事態になっていた。

AP通信によると7月14日に試験徴収を終えた市は約43万8000人が入場料を支払い、約220万ユーロの収入をもたらしたと発表した。罰金は科されなかったという。市は収入を運河の修復などに充てるとしている。

ただ、日帰り観光客の抑制効果は限定的だった。イタリアメディアによると試験期間の最初の11日の市内への観光客数は平均7万5000人だった。これは23年の繁忙期の休日を1万人程度上回る水準だ。

野党の市議会議員のジョバンニ・アンドレア・マルティーニ氏は「入場料制度は失敗」と断じた。現地メディアはオンライン予約システムの設置など制度に関連する費用に入場料の総収入を上回る300万ユーロが費やされたと報じた。

一方、市当局は来年も繁忙期に制度を導入する構えだ。ロイター通信によると、市の広報担当者は来年は入場料を倍の10ユーロに引き上げることを検討していると明かした。

観光を担当する市議会議員のシモーネ・ベントゥリーニ氏は「今後数年で導入日数を増やし、料金を上げればさらに効果的になるだろう」と語った。今回の効果が限定的だったことには「日帰り客が奇跡的に全員いなくなるとは誰も予想していなかった」と開き直った。

住民の間では冷ややかな見方が少なくない。市内でレストランを営む40代の男性は「入場料制度が恒久化したら、ベネチアが博物館のようになってしまう」と嘆いた。

試験期間中には市内で複数回、反対派によるデモが発生した。集まった市民からは「入場料は街のイメージの低下につながる」「市外に流出した住民を呼び戻す支援こそが必要だ」との声が相次いだ。

入場料制度には、低所得者層や豊かでない若年層の旅行を困難にさせるデメリットも指摘される。予約は無料とし、市への訪問者数に上限を設ける方が効果的だとする意見もある。

(ウィーン=田中孝幸)

[日経ヴェリタス2024年8月25日号]より