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2023/9/29
海外医療通信2023年9月号 【東京医科大学病院 渡航者医療センター】

※当コンテンツは、東京医科大学病院・渡航者医療センターが発行するメールマガジン「海外医療通信」を一部転載しているものです

【リンク】東京医科大学病院 渡航者医療センター

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海外医療通信 2023年9月号

・海外感染症流行情報 2023年9月

(1)全世界:新型コロナウイルス流行状況

WHOによる新型コロナウイルス流行に関する週報の発表は9月1日で終了となり、今後は月報として報告される予定です(WHO coronavirus disease 23-9-1)。米国やヨーロッパ諸国では9月に入り新型コロナの入院患者数や、死亡者数などがやや増加傾向にあります(米国CDC 23-9-23, ヨーロッパCDC 23-9-21)。流行中のウイルスはオミクロン株のXBB系統(EG.5など)が主流となっています。オミクロン株の新たな派生型であるBA.2.86が、7月末より世界15か国で137人から検出されています(英国HSA 23-9-22)。変異箇所の多いウイルスであり、WHOなどでは監視を強めています。

日本では7月から夏の流行が発生していましたが、9月中旬には定点報告数が全国的に減少し、流行のピークを越えた模様です(厚生労働省 23-9-22)。9月20日からは国民全員を対象とした秋のワクチン接種が開始されました。

(2)全世界:インフルエンザの流行状況

オーストラリア、南アフリカ、チリなどで発生していた南半球の冬のインフルエンザ流行は、収束に向かっています(WHO influenza 23-9-18)。一方、東南アジア(マレーシア、タイ、シンガポールなど)や南アジア(バングラデッシュ、ネパールなど)で、8月頃よりA型の流行が拡大しています。こうしたアジアの熱帯・亜熱帯地域では雨期にインフルエンザの流行が起きますが、今がその時期にあたります。なお、日本でも9月に入り、インフルエンザ患者が増加しており、東京などでは注意報レベルになっています(厚生労働省 23-9-22)。

(2)アジア:アジアでのデング熱流行

9月はアジア各地でデング熱患者の増加が報告されています。シンガポールでは今年の患者数が例年より少なく推移していましたが、9月から増加傾向にあります(Outbreak News Today 23-9-8)。台湾でも8月末から台南を中心に患者数が増加しており、9月上旬には4000人を越えました(Outbreak News Today 23-9-6)。南アジアのバングラデッシュでも今年はデング熱患者が増加しており、9月中旬までに18万人の患者が発生しました(Outbreak News Today 23-9-24)。死亡者も900人以上と増えています。

(3)アジア:ベトナム北部でジフテリア患者が発生

ベトナム北部の3つの省でジフテリア患者が発生しています(米国CDC 23-9-20)。Dien Bien省では6人の患者が発生し、1人が死亡しました(Outbreak News Today 23-9-19)。ベトナム北部に滞在する際には、三種混合ワクチンなどでジフテリアトキソイドの追加接種を受けておくことを推奨します。

(4)アジア:インド南部でニパウイルスが流行

インド南部のケララ州で、8月末からニパウイルスの患者が6人発生しました(ヨーロッパCDC 23-9-22)。このうち2人が死亡しています。ニパウイルスはコウモリが保有するウイルスで、コウモリの接触した果物を食べることなどで感染し、脳炎など重篤な症状をおこします。ケララ州では2018年にこの感染症の流行が確認され、今回は4回目の流行になります。

(5)ヨーロッパ:フランスでボツリヌス食中毒が発生

フランス・ボルドーにある某レストランでボツリヌス食中毒が発生しました(WHO 23-9-20)。当地ではラグビーワールドカップの試合が開催されており、外国人旅行者を中心に9月中旬までに15人の患者が発生し、1人が死亡しました。この食堂で食べたサーディーン(魚料理)が原因とみられています。ボツリヌス菌は神経毒を産生し、手足の麻痺や呼吸の障害など重篤な症状を起こします。

(6)中南米:デング熱の流行

今年は中南米でデング熱患者数が例年よりも大幅に増加しており、すでに340万人に達しています(米州保健機関PAHO 23-9-15)。今年前半はブラジル、ペルー、ボリビアなど南米諸国で患者数が増えていましたが、9月からは中米やカリブ海諸国でも増加がみられます。メキシコでは今年になり昨年の3倍のデング熱患者が発生しおり、グアテマラ、コスタリカ、ドミニカ共和国などでも昨年の2倍以上の患者が確認されています。現地滞在中は蚊に刺されない対策をとってください。

・日本国内での輸入感染症の発生状況(2023年8月7日~23年9月10日)

最近1ヶ月間の輸入感染症の発生状況について、国立感染症研究所の感染症発生動向調査 2023年 (niid.go.jp) を参考に作成しました。

(1)経口感染症:輸入例としてはコレラ1人、細菌性赤痢2人、腸管出血性大腸菌感染症24人、チフス1人、A型肝炎1人、アメーバ赤痢7人、ジルアジア症1人、クリプトスポリジウム症1人が発生しています。腸管出血性大腸菌感染症は前月(12人)から2倍に増加し、韓国での感染が14人と前月(11人)に続いて多くなりました。

(2)昆虫が媒介する感染症:デング熱が26人発生し、前月(13人)に比べて2倍に増えました。感染国はタイ(5人)、フィリピン(3人)、インド(3人)が多くなっています。マラリアの輸入例は5人で、いずれもアフリカ(ナイジェリア、シェラレオネ、トーゴ、ギニア、ウガンダ)での感染でした。

(3)その他: 麻疹の輸入例が1人あり、シンガポールでの感染でした。