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2023/1/31
海外医療通信2023年1月号 【東京医科大学病院 渡航者医療センター】

※当コンテンツは、東京医科大学病院・渡航者医療センターが発行するメールマガジン「海外医療通信」を一部転載しているものです

【リンク】東京医科大学病院 渡航者医療センター=====================================================

海外医療通信 2023年1月号

海外感染症流行情報 2023年1月

 

(1)全世界:新型コロナウイルス流行状況

23年1月は世界的に新型コロナウイルスの新規感染者数が減少傾向にあります(WHO Corona virus disease 23-1-25)。ウイルスの種類はオミクロン株のBA.5が引き続き主流で、その系統にあたるBQ.1の占める割合が世界的に増加傾向にあります。また、米国ではBA.2系統のXBB.1.5の検出される割合が、半分近くまで増加しています。XBB.1.5は感染力が従来のオミクロン株よりも強い可能性があり、WHOも監視を強化しています。日本では第8波の流行がピークを越えてきましたが、一日の新規感染者数は8万人前後とまだ多い状況です。

(2)全世界:インフルエンザの流行状況

22年12月から北半球でインフルエンザの流行が発生しています(WHO 23-1-23)。米国では流行がピークを越え、感染者数は減少傾向にあります(米国CDC flu view 23-1-20)。米国CDCは今期の流行でインフルエンザ患者が2500万人、死亡者が1万7000人発生したと推計しています。ヨーロッパでも流行のピークを越えている国が多くみられますが、フィンランドやポーランドでは患者数がまだ多い状況です(ECDC 22-1-20)。なお、流行しているウイルスのタイプは、米国ではA(H3N2)型、ヨーロッパではA(H1N1)型が主流です。東アジアでも患者数が増加傾向にありますが、まだ流行のレベルは低い状況です(WHO influenza 23-1-23)。

(3)全世界:サル痘の流行状況

22年5月から世界的に増加していたサル痘(mpox)の患者数は、8月をピークに減少しています(WHO 23-1-24)。ピーク時には1週間の患者数が6000人を越えていましたが、最近は300人前後になっています。現在の発生国はアメリカ大陸が大多数です。累積患者数は約8万5000人で、うち83人が死亡しました。

(4)アジア:フィリピンで腸チフスが増加

フィリピンでは22年に腸チフス患者が約1万5000人発生しており、21年に比べて2倍以上に増加しました(Outbreak News Today 23-1-3)。患者発生が多いのは、バギオ市のあるコルディリラ地域などです。同国に滞在する場合は腸チフスワクチンの接種をご検討ください。

(5)アジア:バングラデッシュでニパウイルス感染症の患者が増加

バングラデッシュ西部でニパウイルス感染症の患者が23年1月に3人発生しており、いずれも重症です。ニパウイルスはコウモリが保有するウイルスで、ヒトに感染すると脳炎などの症状をおこします。インドやバングラデッシュで流行しており、ヒトへの感染経路は、ウイルスを保有するコウモリの体液で汚染された果物などの経口摂取になります。今回のバングラデッシュでの事例は、いずれもナツメヤシジュースの摂取が原因とみられています。

(6)アフリカ:ウガンダのエボラ熱流行が終息

東アフリカのウガンダでは22年9月からエボラ熱が流行していましたが、12月以降は新たな感染者の発生が見られず、WHOは流行終息宣言を出しました(WHO 23-1-14)。今回の流行で累積患者数は164人(疑い22人含む)で、このうち55人が死亡しました。

(7)南米:エクアドルで鳥インフルエンザ(H5N1型)の患者発生

エクアドルのアンデス山中の町で、9歳女児が鳥インフルエンザH5N1型に感染し、重症になっています(WHO 23-1-18)。この女児は家禽から感染したと考えられています。前号でも紹介したように、22年は世界各地で鳥インフルエンザH5N1型の患者が相次いで発生しましたが、中南米では最初の患者発生になります。

(8)南米:ブラジルで蚊媒介感染症が増加

ブラジルでは 22年にデング熱患者が145万人発生しており、21年に比べて160%以上の増加になっています(Outbreak News Today 23-1-8)。ジカ熱の患者も22年は3万4000人で、21年の発生数の2倍に増加しました(Pan American Health Organization 22-12-31)。同国滞在中は蚊に刺されない注意を心がけてください。

日本国内での輸入感染症の発生状況(2022年12月12日~23年1月8日)

 

最近1ヶ月間の輸入感染症の発生状況について、国立感染症研究所の感染症発生動向調査 2023年 (niid.go.jp)を参考に作成しました。新型コロナウイルス感染症の輸入例については、厚労省発表の検疫事例 新型コロナウイルス感染症に関する報道発表資料(発生状況、検疫事例)|厚生労働省 (mhlw.go.jp) を参考にしています。

(1)経口感染症:輸入例としては細菌性赤痢2人(いずれもインドネシアで感染)、チフス2人(ネパール、バングラデッシュで感染)、アメーバ赤痢1人、A型肝炎1人が発生しています。

(2)昆虫が媒介する感染症:デング熱が7人発生し、前月(9人)と大きな変化はありませんでした。感染国はベトナム、タイ(各2人)、インドネシア、マレーシア、インド(各1人)でした。マラリアの感染は2人で、ケニアとカンボジアでの感染でした。

(3)新型コロナウイルス感染症:2023年1月1日~25日までに輸入例として769人が報告されており、736人が中国からの入国者でした。それ以外では、米国(9人)、ベトナム(4人)、フィリピン(3人)などからの入国者が報告されています。

東京医科大学病院・渡航者医療センターからのお知らせ

 

当センターでは、「黄熱ワクチン接種後の黄熱ウイルス抗体価の持続性に関する研究」を実施しています。本研究は下記の方を対象に黄熱ウイルス抗体価を測定しています。

・黄熱ワクチンの1回のみ接種歴があり、接種日から5年以上経過した日本人成人
・黄熱ワクチンの接種歴を確認できる記録を有する者

この研究について詳しくお知りになりたい場合は渡航者医療センター( travel@tokyo-med.ac.jp )までご連絡ください。