※当コンテンツは、東京医科大学病院・渡航者医療センターが発行するメールマガジン「海外医療通信」を一部転載しているものです

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海外医療通信　2022年10月号

海外感染症流行情報　2022年10月　

（１）全世界：新型コロナウイルス流行状況

10月になり世界的には新型コロナウイルスの感染者数が減少傾向にあります（WHO Corona virus disease 2022-10-19）。国別ではドイツ、フランス、イタリア、シンガポールなどで感染者数が増加しています。シンガポールではXBBと呼ばれるオミクロン株BA.2の派生型が流行しており、米国やヨーロッパではBA.5の派生型であるQS.1が少しずつ増加しています。今後、北半球の冬の到来とともに、感染者数の再増加が予測されており、十分な注意が必要です。

日本では10月から水際対策が大幅に緩和されており、ワクチン接種を3回受けていれば、入国時に新型コロナの陰性証明書を提出する必要がなくなりました。詳細は検疫所のホームページをご参照ください。検疫措置の詳細について (forth.go.jp)　なお、外務省は空港での海外在留邦人向けのワクチン接種を継続しています。外務省 海外安全ホームページ｜日本での新型コロナウイルス・ワクチン接種を希望する海外在留邦人等の皆様へのお知らせ (mofa.go.jp) 　

（２）全世界：季節性インフルエンザの流行状況

10月は世界的にインフルエンザの流行状況が低いレベルにあります（WHO Influenza　22-10-17）。南半球では南アフリカやアルゼンチンで感染者数がやや増えています。北半球の北米、ヨーロッパ、東アジアでは感染者数の増加がまだ見られていません。

（３）アジア：アジアでデング熱の流行拡大

東南アジアではデング熱患者の発生が例年になく多くなっています（WHO西太平洋 22-10-6）。ベトナムでは今年の累積数が25万人と昨年の４倍以上で、ホーチミンでは６万人以上に達しました（Outbreak News Today 22-10-18）。フィリピンでも累積数が昨年の３倍近くの17万人で、マニラでは２万人近い患者が確認されています（Outbreak News Today 22-10-14）。

南アジアでもデング熱患者の増加が報告されています。ネパールではカトマンズのあるバグマチ州を中心に増加しており、９月末までに３万人近くの患者が確認されました（WHO 22-10-10）。パキスタンでも水害の影響により、シンド州などでデング熱患者が増加しており、９月末までに２万人以上の患者が発生しました（WHO 22-10-13）。パキスタンでは三日熱マラリア患者も増加しており、８月までに３４０万人と例年を大幅に上回る数になっています（WHO 22-10-17）。現地滞在中は蚊に刺されない対策を十分にとってください。

（４）アジア：ベトナムと中国で鳥インフルエンザ患者が発生

ベトナム北部のフート省で、10月初旬に５歳の女児がH５型の鳥インフルエンザを発症し、重体になっています（Outbreak News Today 22-10-20）。同国では2003年から128人のH5N1型の鳥インフルエンザ患者が発生していましたが、今回の事例は2014年以来の患者発生になります。中国南部の広西自治区では、９月初旬に３歳男児がH5N6型の鳥インフルエンザを発症しました（香港保健局　22-10-21）。同国で81人目の事例になります。

（５）アジア：ベトナムで狂犬病患者が増加

ベトナムでは今年になり８月までに４０人の狂犬病患者が発生しています（Outbreak News Today 22-9-28）。同国では2011年以降、患者数が減少していましたが、2017年から再び増加傾向になっています。ベトナムに長期滞在する前には、狂犬病ワクチンの接種を受けておくことを推奨します。

（６）アフリカ：ウガンダでエボラ熱の流行拡大

東アフリカのウガンダで、９月から発生していたエボラ熱の流行が拡大しています（ヨーロッパCDC 22-10-21）。患者数は10月中旬までに64人となり、25人が死亡しました。これ以外に20人以上の疑い患者が発生しています。患者発生は同国中央部のムベンデで始まりましたが、周辺の地域に拡大しており、首都カンパラでも5人の患者が確認されています（Outbreak News Today 22-10-23）。

日本国内での輸入感染症の発生状況（2022年9月5日～10月9日）

　

最近1ヶ月間の輸入感染症の発生状況について、国立感染症研究所の感染症発生動向調査2022年 (niid.go.jp)を参考に作成しました。新型コロナウイルス感染症の輸入例については、厚労省発表の検疫実績（2022年10月14日）000990801.pdf (mhlw.go.jp)を参考にしています。

（１）経口感染症：輸入例としては腸管出血性大腸菌2人、チフス1人、赤痢アメーバ1人が発生しています。

（２）昆虫が媒介する感染症：デング熱が18人発生し、前月（8人）より倍増しました。感染国はネパール（7人）、ベトナム（4人）、フィリピン、シンガポール、インド（各2人）、インドネシア（1人）でした。マラリアの感染は6人で、全員がアフリカ（ガーナ2人）での感染でした。蚊に媒介されるチクングニア熱がマレーシアで1人、マダニに媒介されるライム病が米国で1人報告されました。

（３）新型コロナウイルス感染症：2022年9月10日～10月1日までに輸入例として560人が報告されており、外国籍は327人（58.4％）でした。前月（846人）に比べて減少しています。感染者の滞在国で多かったのは、米国296人（外国籍230人）、ベトナム43人（17人）、インド31人（14人）、パキスタン23人（14人）、タイ14人、英国11人、シンガポール11人でした。