※当コンテンツは、東京医科大学病院・渡航者医療センターが発行するメールマガジン「海外医療通信」を一部転載しているものです
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東京医科大学病院 渡航者医療センター
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海外医療通信 2021年3月号
海外感染症流行情報 2021年3月
(1)全世界:新型コロナウイルスの流行状況
新型コロナウイルスの累積感染者数は3月下旬までに約1億2300万人、死亡者数は約273万人になりました(米国ジョンホプキンス大学 2021-3-24)。3月に入り世界各地で感染者数が増えており、とくに、ブラジル、米国、インド、フランス、イタリアでの感染者数が多くなっています(WHO Corona virus disease 2021-3-23)。こうした増加には変異ウイルスの発生が関係しており、英国型の検出は125か国、南アフリカ型は75か国、ブラジル型は41か国に拡大しています(WHO Corona virus disease 2021-3-23)。いずれの変異ウイルスも感染力が強く、英国型は病原性が高まっているとの報告もみられます。ワクチンに関しては、英国型には効果があるとされていますが、南アフリカ型には効果が減弱しているようです。日本でも英国型の国内感染が散発しています(国立感染症研究所 2021-3-9)。なお、日本政府は1月の緊急事態宣言の発出とともに水際対策を強化してきましたが、3月22日の緊急事態宣言の全解除後も暫くは水際対策の強化を続けると発表しています。
https://corona.go.jp/news/pdf/mizugiwataisaku_20210318_01.pdf
(2)アジア:中国で鳥インフルエンザの患者発生
中国南部・広西自治区で2月に鳥インフルエンザH5N6型の患者(50歳男性)が死亡しました(Outbreak News Today 2021-3-22)。中国では2014年以来、H5N6型の患者が30人発生しています。また、四川省や安徽省などで今年になりH9N2型の患者が3人(1歳男性、5歳女性、2歳女性)発生し、いずれも軽症でした(Outbreak News Today 2021-3-2)。H9N2型は2015年以来、中国で43人確認されています。
(3)アフリカ:コンゴとギニアのエボラ出血熱流行
コンゴ民主共和国東部の北キブ州で、1月下旬からエボラ出血熱の流行がみられています。患者数は3月までに12人で、うち6人が死亡しました(WHO Africa 2021-3-23)。3月になり新しい患者は発生しておらず、終息が近い模様です。西アフリカのギニアでも1月中旬からエボラ出血熱の患者が18人発生し、9人が死亡しました(WHO Africa 2021-3-23)。同国では2013年から2016年までエボラ出血熱の大流行が発生しており、その再燃とみられています。
(4)ヨーロッパ:最近の結核患者数
ヨーロッパ(欧州経済領域内)では2019年に4万9000人の結核患者が発生しました(ヨーロッパCDC 2021-3-22)。これは人口10万人あたり9.6人の発生数になります。過去5年で新規患者数は減少していますが、外国人患者の割合が35%と増えています。なお、日本では2019年の新規患者数が人口10万人あたり11.5人で、ヨーロッパよりやや高く、外国人の割合は1割でした。
(5)南米:ブラジル南部で黄熱が流行
ブラジル南部のSanta Catarina州で黄熱の患者が2人発生しました(Outbreak News Today 2021-3-13)。この地域では黄熱に感染したサルの死体も多数見つかっており、黄熱の流行が拡大している模様です。ブラジルに滞在する際には黄熱ワクチンの接種を受けるようにしてください。
日本国内での輸入感染症の発生状況(2021年2月8日~2021年3月7日)
最近1ヶ月間の輸入感染症の発生状況について、国立感染症研究所の感染症発生動向調査を参考に作成しました。
出典 https://www.niid.go.jp/niid/ja/idwr-dl/2021.html
新型コロナウイルス感染症の輸入例については、厚労省発表の検疫実績(2021年3月17日)を参考にしています。
出典 https://www.mhlw.go.jp/content/000757957.pdf
(1)経口感染症:輸入例としては赤痢アメーバが6人で、感染国はフィリピンとタイが各2人でした。
(2)昆虫が媒介する感染症:マラリア、デング熱の症例はこの期間に報告されませんでした。
(3)新型コロナウイルス感染症:2021年2月7日~3月6日までに90人が輸入例として報告されており、前月(152人)より減少しています。このうち日本国籍者は38人でした。滞在国で多かったのはパキスタン20人、UAE12人、米国9人、フィリピン6人、ウクライナ6人、インドネシア5人でした。
今月の海外医療トピックス
破傷風と災害
3月11日、東日本大震災から10年目を迎えました。多くの人がこの節目を様々な思いで過ごされたと思います。さて、破傷風という感染症をご存知でしょうか?破傷風菌は、世界中の土壌の中に存在します。傷口から体内に侵入した菌が毒素をつくると、痙攣や呼吸障害を起こし、死に至ることもあります。幸い、破傷風にはワクチン(トキソイド)があり、小児期に接種しますが、日本で定期接種化されたのは1968年からです。それ以前に生まれた人や、ワクチン接種をした人でも最終接種から10年以上経過している場合は、追加接種が必要です。現在、世界で毎年約2万人が破傷風を発症しています。日本では毎年約120人が感染し、10人弱が死亡しています。東日本大震災の時には、被災地で感染者が多くみられました。世界中のどこにいても、災害や事故が起こる可能性はゼロではありません。破傷風はトラベルクリニックでまず推奨する重要なワクチンですが、渡航を予定していなくても、災害ボランティアに参加する人、土に触れる人、屋外作業をする人には、積極的な破傷風ワクチンの接種をお勧めします。(臨床助教 栗田直)
<参考>国立感染症研究所.破傷風とは https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/466-tetanis-info.html
渡航者医療センターからのお知らせ
(1) オンラインによるワクチン相談の開始
渡航者医療センターではオンラインによるワクチン相談サービスを提供しています(有料)。オンライン診療で、渡航地域に応じたワクチン接種プランの提示や、留学に必要な書類の作成アドバイスを行います。詳細は下記をご覧ください。
https://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/news/shinryo/20200729_2.html
(2)連載コラムのご紹介
当センターの濱田部長が時事メディカルで「新型コロナ流行の本質」を、メディカルノートで「病で描く世界地図」を連載しています。
日刊トラベルビジョン 様より