添乗集団 夢屋

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お役立ち情報
2025/3/6
名ガイドのポイント
https://www.tjnet.co.jp/2025/01/27/%e5%90%8d%e3%82%ac%e3%82%a4%e3%83%89%e3%81%ae%e3%83%9d%e3%82%a4%e3%83%b3%e3%83%88

より

ガイドさんの偏愛を、どうやって参加者さんに伝えていったらよいのだろうか。そこにはメソッドがある。10年以上にわたり何百というガイドさんを見てきた私が考える5つのポイントを紹介しよう。

 1つ目は「目の前のモノを見て話す」。残念な例は寺に入っていきなり「この寺は1291年に創建され……」など説明を始めること。面白いガイドさんは目の前にあるものをよく見るよう注目を促す。例えばお寺なら「屋根が反っていて雄大ですよね」。そして「こういう屋根の傾斜は◯◯時代の技術革新の影響で」などモノの見方を伝える。そのうえで「これほど屋根に勾配があるということは、この寺は◯◯時代に出来たのです」と読み解きする。まち歩きの醍醐味は現地にいることだ。目の前のモノや景色を目で見て、音を聞いて、時に触って、匂いを嗅いで。五感をフルに使って味わってもらい、その体験とひもづけた案内をしたい。

 2つ目は「疑問からスタートする」。参加者さんにモノを見てもらう時、問いを投げ、一緒に考える。例えば違和感のある道にさしかかったら「この道、なにか変じゃありませんか」と投げかける。参加者さんから「不自然なカーブ」と反応があったら、さらに「じゃあ、どうして曲がっているんでしょう」と疑問を重ねる。参加者自ら謎を解き明かそうとする時、その体験はいっそう面白く感じる。

 3つ目は「ライブ感を大事にする」。まち歩きツアーは常に1度きりのライブ。そしてその日が常に最高の1日だ。参加者も変わればまちの表情も変わる。いつも同じツアーをするより、参加者の言葉を受けて説明を変え、たまたま出会った住民の方の話を聞いてみたり。偶然が織りなす「その時にしかできない体験」を取り入れながら、その瞬間がいかに素晴らしいかを訴える。

 ライブ感を醸成するために必要な4つ目が「コンセプトを忘れない」。コンセプトとはまいまいの場合、ツアータイトルそのものだ。ガイドしているとサービス精神ゆえ、目に付くものすべて紹介しなければならない気分になる。ツアーの本筋から離れた話があってもよいが、その場合もコンセプトを忘れないことが重要だ。どれだけライブで話を膨らませても、コンセプトを中心に据えている限りツアーのまとまりが保たれる。

 最後は「感情の発露を恐れない」。参加者さんはガイドさんの知識情報だけ欲しいわけではない。ガイドさんと一緒にまちを歩く体験が楽しいのだ。中でもガイドさんの持つ「愛」に揺さぶられたい。そのためにはツアー中に面白がっている様子を隠さないのが重要だ。ガイドなのだから冷静に、など自分を抑える必要はない。好きなモノに対して、自分がアツくなる姿をそのまま見せる。

 以上を意識すると、ガイドさんの愛情が参加者に伝播する唯一無二のツアーをつくれるはずだ。

以倉敬之●まいまい京都代表。高校中退後、バンドマン、吉本興業の子会社、イベント企画会社経営を経て、11年にまいまい京都を創業。NHK「ブラタモリ」清水編・御所編・鴨川編に出演した。共著に『あたらしい「路上」のつくり方』。京都モダン建築祭、神戸モダン建築祭、東京建築祭実行委員。