添乗集団 夢屋

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2024/6/6
もはや「1台に1人」ではないバスガイド 1人で複数のバスを案内も リモート時代の新しい働き方
https://www.sankei.com/article/20240604-6RYY6FJHAVJY5PMTHBPBSGX5Z4

より

全国的にバスガイドが減少する中、ガイドがバスに乗らずに遠隔で案内するリモートシステムを導入する事業者が増えている。従来の「1台に1人」にとらわれずに、1人で同時に複数のバスを案内したり、反対に複数のガイドが1台のバスを交代で担当して時短勤務を可能にしたり。新型コロナウイルス禍後の観光需要の回復に向け、人材不足の解消策として期待されている。

奈良交通(奈良市)は、5月からリモートシステムを本格導入。本社のブースに備え付けられたカメラにガイドが話しかけると、映像がインターネット経由でバスに送信される仕組みだ。バスの前部と後部に取り付けられたモニターにガイドの映像が映し出されるとともにスピーカーから音声が流れる。

ガイドは手元のモニターに映し出されるバスの位置情報や車窓の風景などをもとに、話す内容を工夫する。修学旅行生などの団体客を念頭に、同時に最大20台のバスで案内ができ、双方向での会話にも対応している。

同社ではピークの昭和58年には238人のバスガイドがいたが、現在は期間限定の登録者を除くと20人程度。人手不足をカバーしようと、新型コロナ禍で脚光を浴びたリモート技術に着目し、NTT西日本などの協力を得て実現した。

奈良交通のバスガイド、桜井史子さん(53)は「同時に複数のバスを案内するので、それぞれの車両の位置を考慮して話さなければならない」としつつも、「スライドショーや映像などを使ってさまざまな案内ができる。モニターなら後ろの座席の人でも見やすいし、写真もきれいに表示できる」と利点を話す。

同社によると、参加した修学旅行生たちの反応も上々で、「オンラインで生徒が珍しく感じたのか、想像していた以上にガイドの話を真面目に聞いていた」という。

エイチ・アイ・エス(HIS)沖縄とIT企業「okicom」(沖縄県宜野湾市)も昨夏から、本島内で走るシャトルバスで同様のシステムをテスト運用している。現在はHIS沖縄の職員が会社から乗客らに観光案内をしているが、将来的には自宅などさまざまな場所から行うことも検討しているという。

HIS沖縄とokicomが導入したリモートガイドの様子(okicom提供)

HIS沖縄とokicomが導入したリモートガイドの様子(okicom提供)

一方、名阪近鉄バス(名古屋市)は令和4年から、配信者の分身となるキャラクターが案内する「バーチャルバスガイド」を導入している。配信担当はバスに乗車しないため午前中だけなど柔軟な勤務が可能で、結婚を機に一度退職し、復職した職員や育児中の職員もいるという。6台の車両でシステムを導入中で、昨年は27回運用があった。担当者は「バスガイドの新たな形として提案していきたい」と意気込んだ。

バスガイドの減少の背景には、団体旅行の減少など取り巻く環境の変化がある。ただ、急増する外国人観光客を対象にしたガイドなど新たな需要も見込まれており、人材確保は急務だ。

日本バス協会(東京都)によると、令和4年現在でバスガイド数は239事業者で計2480人と、平成20年の5012人から半分近くに減った。少子化による修学旅行生の減少や、職場旅行や町内会の旅行が減ったことに加え、法令の規制緩和で貸し切りバスが運転手1人で運行できるようになり、ガイドなしの運行が増加したことも影響したとみられる。

一方で、修学旅行を中心に需要は依然として根強い。関西のバス会社の担当者は「バスガイドの希望の有無をアンケートすると『現地に詳しいプロに案内してもらいたい』と望む声がほとんど」と指摘する。

近年では、日本文化に関心を持つ外国人観光客に分かりやすく説明できるガイドの役割が見直されつつある。別の担当者は「仏教に詳しかったり語学に堪能だったりと、多種多様なガイドのあり方も求められている」と語った。(秋山紀浩)