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2020/3/26
海外医療通信 2020年3月号【東京医科大学病院 渡航者医療センター】

※当コンテンツは、東京医科大学病院・渡航者医療センターが発行するメールマガジン「海外医療通信」を一部転載しているものです

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東京医科大学病院・渡航者医療センター

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海外医療通信 2020年3月号

海外感染症流行情報 

(1)全世界:新型コロナウイルスの流行状況

WHOは3月11日に新型コロナウイルスの流行がパンデミック(世界的な流行)の状態にあると発表しました(WHO COVID19 News 2020-3-11)。3月24日時点で流行は世界190か国以上に及んでおり、感染者数は38万人、死亡者数は1万6000人以上にのぼっています。今回の流行が最初に発生した中国では、新しい感染者の発生がほぼ収束していますが、3月以降、イタリアからヨーロッパ各地に流行が波及しており、イタリアでは3月下旬までに6万人以上の患者が発生し、6000人の死亡が確認されました。また、米国でも感染者数が急増ししており4万人以上にのぼっています。東南アジア、インド、中東、ブラジルなどでも感染者数が増加傾向にあります。こうした感染者数の増加にともない、日本の外務省はヨーロッパ諸国、イラン、中国と韓国の一部地域への渡航禁止を勧告しています。https://www.anzen.mofa.go.jp/ 

また、日本政府は中国、韓国、ヨーロッパ諸国、イラン、エジプト、米国からの入国者について、自宅などでの2週間の待機と健康観察を求めています。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00098.html

(2)アジア:東南アジアでのデング熱の流行状況

東南アジアの国々ではデング熱の患者数が増加傾向にあります。3月上旬までにマレーシアやフィリピンではそれぞれ2万人を越える患者が確認されました(WHO西太平洋 2020-3-12)。シンガポールでも3200人の患者が発生しており、昨年よりやや多い数になっています。なお、当センターの濱田教授らはデング熱など蚊媒介感染症の予防対策を紹介した動画を作成しました。下記のホームページに掲載されていますので、ご活用ください。http://www.tra-dis.org/movie/index.html

(3)アフリカ:コンゴでのエボラ熱流行は収束傾向

コンゴ民主共和国で発生しているエボラ熱の流行は収束傾向にあります。2020年2月17日以降、新たな患者は報告されていません(WHO Outbreak news 2020-3-19)。2018年からの流行による累積患者数は3440人(疑い含む)で、このうち2264人が死亡しました。

(4)武田薬品のデング熱ワクチンが第3相試験を終了

武田薬品が開発していたデング熱ワクチンTAK-003の第3相臨床試験結果が発表されました(Lancet 2020-3-17)。このワクチンは遺伝子組換えの生ワクチンで、3か月間隔で2回接種します。アジアや中南米で2万人の小児を対象に行った試験結果では、接種後17か月のワクチン接種による感染防御効果が73.3%で、重症化は85.9%抑制しました。重篤な副反応は今のところみられていません。

・日本国内での輸入感染症の発生状況(2020年2月10日~2020年3月8日)

最近1ヶ月間の輸入感染症の発生状況について、国立感染症研究所の感染症発生動向調査を参考に作成しました。新型コロナウイルス流行に伴う海外渡航者数の減少に伴い、輸入感染症全体の発生数は減少しています。出典:https://www.niid.go.jp/niid/ja/idwr-dl/2020.html

(1)経口感染症:輸入例としては、細菌性赤痢2例、腸管出血性大腸感染症3例、腸チフス・パラチフス2例、アメーバ赤痢5例、A型肝炎2例、E型肝炎1例が報告されています。

(2)昆虫が媒介する感染症:デング熱は6例で、前月(14例)より減少しました。感染国はマレーシアが2例で多くなっています。マラリアは1例(西アフリカで感染)、チクングニア熱は1例(インドネシアで感染)でした。

(3)その他:麻疹が1例(タイで感染)、風疹は7例で感染国はフィリピン3例、タイ2例でした。髄膜炎菌感染症の輸入例が1例報告されており、ブラジルでの感染でした。

・今月の海外医療トピックス~特集:新型コロナウイルスの流行

(1) パンデミック時の海外渡航者対策

WHOが新型コロナウイルスのパンデミック宣言を発表したのにともない、海外進出企業や旅行業では海外渡航者への長期的対策が求められています。海外旅行や出張になど短期の渡航に関しては出来るだけ自粛することが推奨されます。外務省の渡航禁止勧告がでている国や入国制限を行っている国はもちろんのこと、それ以外の国についても流行状況に応じて渡航を自粛してください。

駐在員など長期滞在者については、流行拡大にともない感染の危険性が増すだけでなく、社会情勢が不安定になる可能性があります。また、感染を疑う症状がみられた場合、かかりつけ医ではなく、指定医療機関に受診する必要性も生じます。このため、流行状況に応じて日本への一時退避を検討してください。とくに高齢者や慢性疾患のある人は重症化の頻度が高くなるため、早めの退避を推奨します

なお、感染リスクの高い国からの帰国者については、2週間は自宅などに待機し、健康状態の観察(検温など)を行ってください。パンデミック時には海外進出企業や旅行業の活動に大きな影響を与えますが、流行が早期に収束すれば経営面での被害を抑えることができます。日本を含む各国の実施している対策にご協力をお願いいたします。(教授 濱田篤郎)

(2) アジア諸国の入国制限措置・入国後の行動制限措置~ 3月25日午後0時現在

日本からの渡航者の多いアジア諸国の中には、新型コロナウイルスの流行にともない入国制限などの措置をとっている国が数多くあります。以下にその概要をまとめました。なお、入国時に新型コロナウイルスにかかっていない検査証明(PCRなど)を求める国については、日本で健康な人への検査ができないため入国不可とご判断ください。(医師 栗田直)

【中国】日本からの15日以内の滞在者への査証免除措置を停止中。入国後の行動制限は各省により対応が異なる。

【韓国】日本からの入国を停止中。

【台湾】居留証,外交,公務の証明,ビジネス上の契約履行等の証明がない限り,一律入境を停止中。

【ベトナム】外国人の入国を停止中。

【カンボジア】3月24日時点で入国制限、行動制限の発表なし。

【タイ】入国予定の航空機搭乗者に対し,新型コロナウイルスに感染の証拠がない旨を示す英文証明書(出発の72時間以内発行)の提示,疾病保険への加入等を義務付けている。日本で検査はできないため、事実上の入国不可。

【マレーシア】外国人の入国を停止中。

【シンガポール】短期滞在者の入国を停止中。労働査証保持者は,保健や運輸等の公共サービスに関連する業種以外は,一時帰国後の入国が不可。全渡航者は入国後14日間外出禁止。

【インドネシア】全ての外国人は目的別の査証取得が必要。査証申請に当たり,医療当局発行の「健康証明書」の提出を要する(インドネシア到着日前7日以内に日本国内の医療機関が発行したもの)。

【ミャンマー】入国する全ての外国人に対して,ミャンマーに向かう航空機の搭乗から72時間以内の新型コロナウイルス陰性証明書の提示を求める。日本では検査できないため,事実上の入国不可。

【インド】外国人の入国を停止中。

【ネパール】日本,韓国,欧州,西アジアなどを出発地又は経由地とする渡航者の入国を停止中。

<参考>外務省:https://www.anzen.mofa.go.jp/covid19/pdfhistory_world.html