添乗集団 夢屋

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2019/12/27
ツアコンオブザイヤー、EXPOで表彰式-受賞者が語る添乗の魅力と可能性も

先ごろ開催された「ツーリズムEXPOジャパン2019」では、「第14回ツアーコンダクター・オブ・ザ・イヤー2019」の表彰式が開催された。今回の受賞者は16人で、当日はグランプリの国土交通大臣賞、準グランプリの観光庁長官賞、委員長賞、会長賞を受賞した4名が登壇。賞状と副賞の目録が贈呈されたほか、受賞者によるパネルディスカッションも披露された。

登壇した受賞者は、「国土交通大臣賞」がジャッツの菅谷眞弓氏(当日は業務のため代理としてジャッツ東京ツアーコンダクターセンター所長陣内氏が出席)、「観光庁長官賞」がツーリストエキスパーツの桝井康平氏、「委員長賞」がフォーラムジャパンの髙橋栄氏、「会長賞」がJTBの安田由佳氏。

きっかけは三者三様、参加者の感謝や「人間好き」が原動力に

パネルディスカッションのテーマは「ベテラン添乗員が語る!-より良い旅作りのために-」。ジャッツの菅谷氏を除く3名がパネリストとなり、日本添乗サービス協会(TCSA)会長の三橋滋子氏がモデレーターを務めた。

添乗の仕事に就いたきっかけについての質問では、桝井氏は「専門学校時代、友人に誘われて始めたのが第一歩」と説明。「体力的にも精神的にも大変だったが、旅行者からのお礼の言葉や笑顔に救われて乗り越えることができた」とこれまでを振り返ったほか、一度旅行業界を離れた経験も今に生きていると語った。

一方、高橋氏は大学時代にある旅行会社からアルバイトの声がかかったのがきっかけと回答。高橋氏は、「旅行者にどのようにして喜んでもらえるかを考えることも大事だが、自分は“お客様も添乗員も喜ぶ旅づくり”を意識して業務に取り組んでいる」といい、20歳から47年間にわたり添乗の仕事に携わっているが「この歳になっても、最後にお客様から笑顔をいただけるのがうれしい」と喜びを語った。

そして今日まで396ツアー、3440日、約90ヶ国をJTB専任添乗員として旅をしてきたという安田氏は、添乗員を選んだ理由は複数あるとコメント。ひとつは、学生時代に専攻していたフランス語と英語を活かすため。そして、毎回が新鮮で常に変化や驚きがある世界で自分を再構築したいと考えたこと、人が大好きであることも列挙し、「究極のサービス業は、数字で達成度合いが計られるものではなく、“これが100点満点”という頂点がない。常に自分を高め続けることができ、無限の可能性を引き出し続けることができると考えた」と語った。

ボランティアなど経験でツアーを豊かに、「添乗員に年齢関係なし」

三橋氏は安田氏が老人ホームでボランティア活動をしたことに触れ、どのように旅行へ繋げるのかを質問。安田氏は、旅行者の中には足腰に自信がない、介護が必要など多くの不安を抱える人がいることから、老人ホームや介護施設でボランティア活動をしたという。施設では、趣味のピアノ演奏を活かして音楽教室の開催や歌の伴奏をしたり食事の介護をしたりしたという。「様々な方とかかわり、そこで得たことを他のツアーに還元する。自分が豊かになれる経験を日常生活で積み上げることが旅づくりのひとつだと考えている」と語った。

続いて三橋氏は、「旅行者と喜びを分かち合えることにやりがいを感じていると思うが、中には扱いづらい利用客もいるのではないか?その場合の対応は」と疑問をぶつけた。これに対して桝井氏は、「確かに旅行者によっては期待に応えるのが難しいと感じる方もいる」と認めたうえで、そのような時は「旅行者に何をすれば笑顔になってもらえるかを意識し、表情や様子を見ながらフォローのタイミングをはかる」とした。

一方、三橋氏の「これから先、どれくらい添乗員を続けるつもりか」の質問に対して高橋氏は、「自分は67歳。添乗員の平均年齢も上がっている。自分としては、体力の続く限り続けたい」と希望を述べつつも、体力的に厳しくなる、もしくは旅行者に満足してもらえなくなった時が潮時だと考えているとも説明。それでも、「添乗員の仕事に年齢は関係ないと思っている。70歳を過ぎて活躍している人もいるので、先輩の背中を見ながら続けたい」と意欲を語った。

旅行業に「夢」を、後輩には「継続」呼びかけも

さらに、「旅行業界に対して改善点を述べるなら?」という三橋氏の質問には、高橋氏が解答。「現在、旅行業界の魅力が下がりつつあることに懸念を抱いている。厳しい言い方にはなるが、添乗員を生業とするために十分な収入を得られているのだろうかと気にする時代になった。複数の仕事をしながらやれるメリットもあるが、専任添乗員をするにあたってゆとりを持って生活できるシステムづくりが必要だと考えている。若い方々が魅力を感じられる業界になって欲しい」と述べた。

続けて若い世代へのメッセージとして桝井氏は、「旅行には夢があるというイメージがあり、そこから添乗員生活がスタートした」と自身の経験を述べた。「旅行は笑顔で楽しくいられる職業だから、若い世代の皆さんにもぜひめざしてほしい。そのために、添乗員の地位が上がればなおうれしい」と語る桝井氏。「若いうちはさまざまな職業を試したい気持ちもあるだろうが、継続も大事。これから添乗員になる方は、原点を見失わず継続してほしいと思う」とアドバイスした。

安田氏は添乗員の仕事ついて、人種や性別、年齢、そして環境の異なる顧客にこれだけ出会える仕事はないと指摘。安田氏は旅に出る度に「安田ノート」という旅の記録を付けているといい、安田氏はこのノートを“一生の宝”と断言。「こんな財産を持てる職業は他にない」と語った。また、「旅行者にとっては一生に一度の旅だが、それは私も同じこと。たくさんの人に出会い、いろいろな気持ちを共有し、時をともにする。見たことのないものを毎回感じることができる。旅はひとつの人生のようなものである」とまとめた。

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